Back to the EdgeCortix Blog

エッジへの移行:グリーンフィールドの機会|EdgeCortix

Image of EdgeCortix株式会社
EdgeCortix株式会社

エッジデバイスに次世代AIプロセッサをもたらす ー Edgecortix株式会社

エッジ・インテリジェンス革命

人工知能と人類のギャップが日に日に縮まることで様々な分野での可能性が広がり続ける今、エッジ・インテリジェンスが、次世代のライフスタイルを切り拓くことになるでしょう。

インテリジェント・エッジは、演算能力とストレージの容量をユーザーに提供し、将来のテクノロジーがエネルギー効率に優れ、超低遅延で動作できるようにします。これにより、エッジコンピューティングは、データの伝送、処理、分析、保存の方法を劇的に変化させるでしょう。アプリケーションやサービスの最適なパフォーマンス、運用コスト、信頼性は、インダストリー4.0にとって極めて重要であり、エッジ・インテリジェンス、あるいはエッジAIによって実現できます。エッジAIは、5G、IoT、そしてAI革命全体において重要な役割を果たすと期待されています。直近のBarclays「Edge Computing」調査レポート(Long et.al., 2020)によると、今後3~5年の間に接続デバイスが急増すると推定されています。 2023年には、世界中の様々な業種の接続デバイスが300億台となり、一国家あたりの平均接続台数は、2018年の24億台から2023年には36億台にまで増加すると予測されています。現在、企業で発生するデータの90%は集中型データセンターで処理されています。 エッジデバイスによる膨大なデータ生成は、現在のクラウドアーキテクチャのボトルネックとなる可能性があります。これは、データ通信速度の高速化、動画配信の急増、データ消費量の多いアプリケーションの出現などが主な原因となってきます。1日に約5TBのデータトラフィックを発生させる完全自動運転車について考えてみると、従来のクラウドオンリーの設定では、自動運転車だけでも日々生成される大量のデータを処理するために必要な帯域幅と処理能力を確保することはできません。この点において、エッジAIは帯域幅の制約を緩和し、優れた電力効率を提供し、データセキュリティを保証し、また必要な処理能力とストレージを提供することができます。(Long et.al., 2020)全体として、エッジ・インテリジェンスの普及は企業や消費者に大きな利益をもたらすと予想され、エッジ市場は様々な産業分野に大きな影響を与えるでしょう。

ビジネスに利益をもたらす

現在、企業のワークロードの大半は、3つの主な領域で処理されています。1つ目はプライベートデータセンター、2つ目はパブリッククラウド・データセンター、そして3つ目はハイブリッドクラウド、つまりその両方の組み合わせです。現在のアーキテクチャは、レイテンシの問題、セキュリティコンプライアンスの課題、そしてほとんどの場合、スケーラビリティの欠如に悩まされています。低レイテンシと高スループットは、今後のアプリケーションの重要な鍵となります。現在、75%の企業がデータのレスポンスの遅れによってビジネスチャンスが損なわれていると感じています。例えば、Googleでは、検索時に0.5秒のレイテンシが発生すると、トラフィックの20%が減少すると言われています。また、Amazonは、レイテンシが100ミリ秒増加するごとに、売上が1%減少すると分析しています。一方、エッジ・コンピューティングでは、ほとんどの場合、10ミリ秒以下のレイテンシを実現することができます。超低遅延の実現によって、リアルタイム分析、拡張現実(AR)、産業用ロボット、自動運転などの未来志向のビジネスの発展が可能になり、これらのビジネスの新規顧客獲得の見通しがさらに強化されます。(Long et.al., 2020)また、エッジでのセンサ生成データの量が急増していることに対しても、エッジ・インテリジェンスが多くの産業にとって重要な要素になっています。エッジにおけるデータ処理と分析のレイヤを追加することで、プライバシー管理とデータセキュリティが向上し、住所や顔などの個人情報保護にも適用できるようになります。さらに、中央のクラウドがサイバー攻撃を受けた場合でも、エッジに保存されたデータをサーバーから分離することもできます。また、ローカルデータ処理により、運用コストやデータ転送コストを効率的に削減できるため、企業にとってもメリットが生じます。非構造化データの急増により、既存のクラウドネットワークでは必要な帯域幅に対応できないため、エッジ・インテリジェンスのニーズが高まっています。Akamaiによると、エッジではコアネットワークが処理できる量のおよそ72倍のデータトラフィックが発生しているとのことです。そのため、クラウドレベルでは、大規模な混雑が発生する可能性があります。 エッジ・インテリジェンスは、エッジで大量のセンサーデータを分析し、価値の高いデータのみを選択してクラウドに送り返し、さらなる処理やトレーニングを行うことでこの問題に対処しています。クラウドからエッジにオフロードするこの仕組みは、帯域幅に関してもコスト削減につながります。(Long et.al., 2020)また、サービスプロバイダーにとっては、コンテンツ配信や広告などの新たな収益源となり、製造業ではパーソナライズされたマーケティングや即時対応によるエッジデータの収益化の向上、リアルタイムでの予知保全やアセットのダウンタイムの削減による業務効率化が期待されます。以上のような利点を考慮すると、エッジコンピューティングは、新しいビジネスチャンスへの道を開き、低遅延データ処理と分析によって、運用効率を高め、新しい収益源とデータの収益化も可能にします。

エンドユーザー向けの新規アプリケーションの可能性

エッジ・インテリジェンスの導入は、エンドユーザーにも大きなメリットをもたらします。今後、ゲームから教育まで、多様な分野で新たなアプリが登場することでしょう。自動運転や製造の自動化により、自由な時間が増える可能性もあります。リアルタイム分析とトラッキングは、より良い顧客体験につながります。 遠隔手術やリアルタイムの健康分析が実現し、医療もさらに発展することでしょう。監視がローカルに処理されることで、安全性が向上する可能性もあります。さらに、センサーレベルでのモニタリングや、コンピュータのエネルギー効率が向上することで、環境に配慮した取り組みにもつながるでしょう。例えば、ドローンのバッテリーの約25%は、GPUで消費され、さらに搭載されるチップによる重量増が加わります。オンボード処理用に、エネルギー効率の高いチップを作ったり、ドローンから近くのエッジサーバー(通信事業者のエッジ)に処理をオフロードすれば、レイテンシを大きく犠牲にすることなく、バッテリー寿命を大幅に延ばすことができます。

barclays-figure-1

インテリジェントなビデオ監視やスマートな交通管理などのユースケースでは、深層学習や推論用にデータをクラウドに送信する前に、低レイテンシとローカルでの分析が必要となってきます。これにより、自動化が進めば、無駄な反復タスクの排除が促進されます。その結果、作業効率の向上、安全な作業環境の提供、交通渋滞の緩和、荷物の迅速な配達、空気の清浄化、犯罪率の低下などの効果が期待できます。 (Long et.al., 2020).

データ処理の低遅延化により、幅広いアプリケーションでユーザー体験が向上するでしょう。さらに、エッジ・インテリジェンスは5Gを補完するものであり、今後3年間で新たなアプリケーションが急増することが予想されます。

エッジ市場への参入

McKinseyの2019年版レポートによると、エッジとデータセンターを合わせた共同市場は、2018年のおよそ60億米ドルから2025年には900億米ドル以上に拡大し、CAGRは45%になると推測されています。この人工知能の拡大傾向は、半導体企業にとっては、テクノロジースタックの総価値の40~50%を獲得する絶好の機会にもなります。McKinseyは、価値と開発の大半は、メモリ、コンピューティング、ネットワーク、ストレージにあると結論づけています。Cisco Cloud Indexによると、年間に生成されるデータ量とデータセンターで管理されるデータトラフィックには大きなギャップがあり、これがあらゆる分野のエッジの収益機会の重要なキーとなるとのことです。 (2020)

また、2023年までに、サービス、ハードウェア、ソフトウェアにまたがる200億ドル規模のビジネスチャンスが、エッジに展開される可能性があると言われています。エッジコンピューティングは、エネルギー効率に優れた低遅延のデータ処理により、企業と消費者の両方にとってより優れたユーザー体験を提供するでしょう。(Long et.al., 2020)

エッジ・インテリジェンスの発展は5〜10年のタイムスパンで、まずは人口の多い大都市圏から始まると推測されています。通信事業者やクラウドプロバイダーがエッジコンピューティング市場で本格的な動きを見せたのは、ここ数年のことです。エコシステムにおけるほとんどの企業が、このグリーンフィールドの機会から利益を得る可能性があります。ハードウェア、インフラ、ソフトウェア、サービスおよびアプリケーションなどは、ほんの数例です。 ハードウェアとインフラについては、エッジコンピューティングのハードウェアのTAM(獲得可能な最大市場規模)は2023年までに52USドルにまで拡大する可能性があり、これはCAGR22%に相当します。(Long et.al., 2020)

barclays-figure-2

エッジ・インテリジェンスに特化したソフトウェアの収益は、データ管理・処理、分析、エッジデバイスのセキュリティ、その他無数のアプリケーションからもたらされる可能性があります。さらに、モバイル、ケーブル、有線、エンタープライズIoT、パブリッククラウドなどにおいて、2018年の推定25億ドルから2023年には100億ドルを超えるTAMの増加が見込まれています。(Long et.al., 2020

エッジAI市場にメリットがあることは明らかですが、エッジ・インテリジェンスのイノベーション普及曲線は業界によって異なることに留意する必要があります。エッジ市場の初期段階では、電力会社、工業、運輸、農業、医療分野の企業が恩恵を受けることになるでしょう。これらのニッチビジネスは、レイテンシへの依存度が高く、高精度な測定が要求されるため、エッジコンピューティングが緊急かつ即座に必要とされています。

barclays-figure-3

ビジネス面では、AI/MLのコスト削減、AIの効率化がエッジコンピューティングの重要な成長要因になります。産業用IoTの世界では、機械学習、より優れた自動化、分析が業務効率を高めるために利用されています。企業は、すべてのデータを中央のデータセンターに送り返すための伝送帯域幅のコストを削減することで、経費削減につなげることができます。

影響を受けるエンドマーケット

超低遅延を実現するアプリケーションが増えれば、長期的には市場の大幅な拡大が予想されます。この傾向は、通信サービス、セキュリティ、ITハードウェア/通信機器、通信インフラ、半導体など、さまざまな市場の裾野まで影響を及ぼす可能性があります。

通信事業者は、低遅延で最適化されたサービスに対する需要が高まるにつれ、エッジへの投資を拡大する必要があると認識しています。また、通信事業者は、本社をデータセンターに移行し、エッジコンピューティング用に不動産を収益化することで利益を得ることができるとも考えています。セキュリティの分野では、エッジが増えればネットワークセグメントが増え、場合によってはファイアウォール・アプライアンスも増える可能性があります。さらに、デバイスの急増に伴い、エンドポイントセキュリティがより重要になり、エッジは、サービスとしてのセキュリティの導入や競争を促進する可能性があるでしょう。

一方、クラウド化によって、多くの従来のITハード/通信ベンダが景気後退に見舞われています。それでも、よりスマートで堅牢なエッジネットワークの開発により、資本損失をある程度までカバーできる可能性があります。 エッジ・インテリジェンス革命の最前線に立つのは、タワー、ファイバーベンダー、データセンターと予想され、中でもタワーカンパニーと無線サービスプロバイダーが最も貢献すると考えられています。

COVID-19がエッジの需要を高める

リモートワークのガイドラインを導入する企業が増えています。在宅勤務は、オフィススペースの総需要を構造的に10-20%削減する可能性があります。TwitterFoursquareが在宅勤務(WFH)を「無期限」に延長するなど、パンデミック時に企業が出社規制を実施した複数の事例があります。 このような状況により、エッジコンピューティングのニーズがさらに膨らんでいます。例えば、Data Economy誌のCOVID-19ページによると、Cisco Webex2020年4月に、200億のミーティングを開催しています。このような通信を可能にするのが、エッジデータセンターの展開です。Akamai、Cloudflare、その他のエッジコンピューティング企業は、これに応じてエッジロケーションでのデータ負荷の急増を記録しています。エッジコンピューティングは、レイテンシを低減し、帯域幅の制約を緩和するために必要なインフラを提供します。

エッジのある未来

エッジ・インテリジェンスの普及は、企業と消費者の双方に大きな変化をもたらすと同時に、エンドマーケットにも影響を与えるでしょう。 エッジコンピューティングは、企業のIoTアプリケーションの水準を向上させることができます。また、エッジ・インテリジェンスを搭載したスマートテクノロジーは、データを多用するアプリケーションに不可欠な膨大なデータを収集、解釈し、即座に対処できるため、既存市場の拡大にも貢献することが期待されます。クラウドプロバイダーからエンドユーザー、デバイスメーカーからアプリケーション開発者まで、エコシステムに関わるほぼすべての人が、このエッジAI革命の影響を受けることになります。未来は、エッジ・インテリジェンスが何を可能にするかにかかっています。

著者について
Jasmine Woodruffは、Edgecortix Inc.の事業開発アナリストです。

© Copyright 2020, EDGECORTIX

参考文献:

Long et. al., 2020. Edge Computing. The Edge is Tomorrow. Barclays Capital Inc.

Batra et. al., 2018. Artificial-intelligence hardware: New opportunities for semiconductor companies. Available at: Batra, G., 2018. Artificial-Intelligence Hardware: New Opportunities for Semiconductor Companies. McKinsey report [online]


より多くのデバイスでエッジAI推論を実現するには?

Image of ジェフリー H グロスマン
ジェフリー H グロスマン
Read more

エネルギー効率に優れたエッジプロセッサー上のマルチモーダル生成AI

Image of サキャシンガ・ダスグプタ博士
サキャシンガ・ダスグプタ博士
Read more